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「マグダラで眠れ」が予想外に面白かった

マグダラで眠れ (電撃文庫)

マグダラで眠れ (電撃文庫)

 

「鉛を金に変える錬金術?はは。鉛を金に変えることはできないが、鉛の鉱石から金を採ることはできる。意地の悪い錬金術師が、そのことを大袈裟に言ったんだろ」

エンターテイメント小説ばかり読んでいる。

最近、ライトノベル方面の新作を読んでいないな、と感じていたので、試しに「マグダラで眠れ」というのを買ってみた。

 試しに、と言うわりに冒険していない選出である。と言うのも、作者の支倉凍砂という人は、「狼と香辛料」を書いた作家だからだ。ライトノベル界では有名人で、教会と商会の支配する、昔のヨーロッパっぽい舞台を描くのが得意だ。

ということで、まぁそこまで外れではないだろう、という感じで一巻目を読んでみたのだが、これは、なかなかいいものだった。

 

何が凄いのかというと、これはもう単純に、キャラクターを書く能力が優れているのだと感じた。異世界からのナニガシとか、異能の力を持つだれそれとか、そういった要素は殆ど出てこない。一巻70ページ辺りまで、女の子も出てこない。主人公は若き錬金術師。その相方も薄らヒゲのオッサンである(多分、二人とも20代だとは思うが)ヒロインを除けば、後は鍛冶屋組合の若き頭領くらいのものだろうか。

それでも、彼ら彼女らの人物像、過去、それを取り巻く社会との関わり、権謀術数といったものが、思考を話の中に引っ張り込むのだ。

 

特に、一巻目のクライマックスには心躍った。

ロクでもない世の中でも、馬鹿馬鹿しい夢を追って、正しいと感じた道をひたすら突き進もうとする主人公と、過酷な人生を送ってきたばかりに、ただただ自分の居場所を求めて翻弄され続けるヒロイン。

私はもう完全に本の中にいるので、彼らのやりとりを夢中で追いかけている。私は主人公の目を通して、物語を見ている。自分をはめようとしている敵が迫っている。錬金術師は孤独な職業で、成果を上げている内はいいが、権力者が掌を返せば即座に命を落とす事も珍しくない。何としても生き残らなければならない。目の前には、自分の力で立ち上がる事すら許されなかったヒロイン。彼女を助けてやりたい。自分の夢も諦めたくない。さぁどうする?本当の敵は誰で、どこにいるのか?

ぐるぐると色々な事を考え、場面のイメージが頭の中に浮かんで消える。緊張が高まり、次のページをめくった直後、

一文が目に止まって、状況が劇的に塗り変わるのだ。

頭の後ろが冷えるのを感じ、呼吸を止めて、じわじわと理解が追いつく。

 

久しぶりに、エキサイティングな読書だった。

特に小説を読むというのは本来そう言うもので、読書をしているな、と考えながら一歩引いて眺めるのではなく、「驚いた」とあれば共に驚き、「嬉しい」とあれば共に喜ぶ、という楽しみ方こそが、最も根元的だと思う。

そこに違和感なく誘導してくれるのが作家の腕だし、支倉凍砂の作るキャラクターである。それは、ライトノベルの得意分野でもある。

 

少しだけ、内容も書いておこう。

錬金術師と聞いて、バトル物のファンタジーを想像した人もいるかも知れない。

ところが実際にはそうではない。

この本では錬金術師はガチの錬金術師なのであって、主に権力者のバックアップの元で、金属の精錬方法などを研究する職業だ。それなりに筋肉のある体つきの者が多く、諸肌脱いで鉱石を溶かしたり分溜したりしている。

それでいて、自らの研究の為なら手段を選ばず、媚びるべきところはひたすら媚びるし、気に入らなければ毒殺まで企てるほどの強烈な「学者」ばかりである。

最初は、学問の美しさ、純粋さ、などというテーマを期待して読んでいたのだが、主人公達は、上から言われた仕事に集中していたり、いかに状況に上手く乗って、自分達の立場を良くするかについて考えている事の方が多く、その方面では期待外れだった。

最も、スポンサーから無理難題を押しつけられても断れず、研究に割く時間が無さそうな辺りは、ある意味現代の研究者達に通じるところがあるだろう。

なんにせよ、ライトノベルに抵抗のない人なら、確実に楽しんで読めることだろう。

読みやすい文章で時間もそうかからないので、暇つぶしのつもりで是非どうぞ。

 

 

マグダラで眠れII (電撃文庫)

マグダラで眠れII (電撃文庫)

 

 

 

マグダラで眠れ (3) (電撃文庫)

マグダラで眠れ (3) (電撃文庫)

 

 

 

マグダラで眠れ (4) (電撃文庫)

マグダラで眠れ (4) (電撃文庫)